今、『文化としての近代科学』(渡辺正雄)を読んでいます。
第1章中に、プトレマイオスの天動説とコペルニクスの地動説は、数学的には等価だった、という説明が出てきます。
地動説と等価になるような説だったので、プトレマイオスの天動説は長きに渡って支持され、覆されることはありませんでした。
しかし、その等価性についてすぐには理解できなかったので、自分の理解のためにも記事を残しておきます。

地動説では、太陽Sが固定で太陽の周りを地球Eと木星Jが円運動します。
例えば、1ヵ月でどのくらい運動するのかというと、地球は12ヵ月で太陽の周りを一周するので、1ヵ月では360°の12分の1で30°だけ回転します(図中のE’)。
一方木星も、1ヵ月である角度x°だけ、太陽の周りを公転します(図中のJ’)。
地球から木星を見ると、木星はx°回転しますが地球も30°回転しますので、(x°ー30°)だけ回転して見えます。(E’からJ’への矢印)
これを、プトレマイオスの天動説から見てみましょう。
まず、木星の周転円の中心は、木星の公転周期のずれと同じx°だけ回転します。(SJ’とE・が平行)
周転円上で、木星は、ES’と平行になるように回転します。(図のJ”)
この条件が、プトレマイオスが立てた条件です。
そのように作図すると、固定された地球(図中のE)から見て、結局木星J”は(x°ー30°)だけ回転して見えるのです。
よって、地動説からみた木星の方向と、天動説から見た木星の方向は一致します。
地動説では、太陽に対して回転する木星を、同様に回転する地球から見るため、相対的角度計算になります。
天動説でも同様の補正をするために、木星を回した後、太陽が回った分だけ木星を逆回転することで(周転円上で公転方向と逆回転することで)相対的角度計算をする、という感じです。
これが、プトレマイオス体系とコペルニクス体系が等価だ、という説明です。
ただし、図を見れば分かりますが、木星までの距離には2つの体系の間で差はでます。
これは、ガリレオの金星の観測などにおいて矛盾として表出します。
(間違っていたらすみません、指摘をお願いします。)
プトレマイオスはこれに加えて、エカント点などを用いて微修正を加えたため、かなり信頼できる予測を立てました。
これは、ティコブラーエの精密な観測、ケプラーの楕円軌道の提案がなされるまで、多くの人々に信じられる理論でありました。
ちなみにこれらは、ティコブラーエのモデル(地球の周りを太陽が公転し、太陽の周りを惑星が公転する)とも等価です。
そのため、どのモデルが正しい、というのはこの段階ではあまり意味のある議論ではありませんでした。
「見方による」だけで、数学的には等価だったからです。
以上、本日学んだことでした。
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